「お坊さんは、毎日お経をお唱えしているからカラオケもさぞ上手なんでしょう?」と法事の際に聞かれたことがあります。
檀家さんのみなさんからすれば朗々とし、こぶしをきかせた声で発声するお経を聞いていればそのように思うのも無理はありません。
また、曹洞宗の梅花流詠讃歌や真言宗の御詠歌などでは、音階があり歌のようなお経も存在するので、それを聞いてカラオケで歌う歌謡曲も上手だと思ったことも関係するでしょう。
しかし、実際の僧侶の歌唱力はいかがなものなのでしょうか?
この記事では、現役僧侶である私の実体験をもとに、そんな疑問にお答えしようと思います。
お坊さんはカラオケが上手い?
最初に結論からいうと、お経で唱える声の出し方とカラオケで出す声では、声の出し方が大きくことなるため、一概にお坊さんだからカラオケも上手であるとはいえません。
そもそも、カラオケで上手いと判断される条件は、音程を正確に出し、ビブラートや抑揚といった歌う技術を取り入れて歌うことで綺麗な曲として歌うことができます。
一方、お経はというと基本的に音階がないので、読む速度を一定に保ったうえで朗々とした声で発声します。
そして、私が考えるお経の上手さというのは、何より大前提としてお経を間違えずにお唱え出来るかということです。
お経の場合、重要視するところは外見より中身ということですね。
これだけみてもカラオケとお経では、だいぶ違いがあることが分かると思いますが、まったくカラオケに生かせないというわけではありません。
私自身、僧侶として長年お経をお唱えしてきて、数えきれないくらい喉をつぶし、それでもお経をお唱えして喉を鍛えてきました。
今では、並大抵のことでは喉がつぶれることはありません。
そして、その影響か声も変化してきました。
「味のある声」といえばいいのでしょうか…長年鍛えた喉で出す低い声は、昔より重みが増してきており、低音の歌をカラオケで歌うときはこぶしのきいた歌を歌えるようになりました。
それがカラオケにおける上手といえるかは分かりませんが、少なからず影響していることは事実でしょう。
僧侶の歌唱力は如何ほど?私のまわりの僧侶で検証
私自身、カラオケが好きで空いた時間があれば一人でもカラオケへ歌いに行きますが、僧侶同士でも忘年会や新年会、または会議の後などカラオケに行く機会はあります。
そこで感じるのは、お坊さんは意外とカラオケが好きな人が多いことです。
私のまわりだけかもしれませんが、今まで百人単位で僧侶と知り合ってきていますが、カラオケが嫌いという人はあまり聞いたことがありません。
そして、驚くのがみなさん総じて歌が上手いというより、聞き入ってしまう落ち着く声いうことです。
上記で、お経とカラオケでは歌の上手さには関係がないといいましたが、僧侶は声を商売道具にしているだけあり、良い声質で引き込まれるような歌という特徴があるように思います。
例外としては、梅花や御詠歌を日々お唱えするような僧侶は、音階もとれており、いわゆるカラオケの採点機能でも高得点をとれるような、カラオケが上手な方達もおりました。
そこで私は、「カラオケが上手な先輩方にお経を読むことで、カラオケの上手さに関係してきますか?」と尋ねたことがあります。
回答は「カラオケの上手さにはお経は関係なく、歌は歌うだけ上手になる」とのことでした。
このことからも、お経と歌の上手さにはさほど関係がないということが分かります。
僧侶の声の鍛え方を紹介
お坊さんだからカラオケが上手いわけではないと上記でお話ししましたが、僧侶の朗々とした味のある声というのは、一般の方ではなかなか出せないと思います。
仮に似たような声が出せたとしても、長くは続かずに喉を壊してしまう恐れがあるのでマネをすることはおススメしません。
お坊さんのような喉が潰れず、こぶしのきいた声を出すにはいったいどうすればいいのでしょう?
これは一言でいうと、お経をお唱えするうちに何度も何度も喉を潰しては治りの繰り返しの果てに身につく声であります。
一長一短でお坊さんのような声を出すことはできないのです。
私自身も祈願寺で勤めていたこともあり、お護摩修行のときに声を張り上げて唱えるお経の影響で何度も喉を潰して今の声を身に着けてきました。
修行あるのみ、という言葉が一番適していると思いますが、言葉通り今までの積み重ねが声としてあらわれているのでしょう。
まとめ
お坊さんは、毎日お経をお唱えし、声を使う商売だからこそカラオケも上手だと考える方も多いことでしょう。
しかし、実情はそれはあまり関係ないでしょう。
お坊さんの鍛えられた声質や音階がある御詠歌などのお経をよく唱える僧侶は例外として、お経をお唱えしていると歌が上手くなるということではないようです。
そもそも、お寺の住職と檀家さんが一緒にカラオケに行くという場面というのはほとんどないと思います。
ですから、イメージとして上手なお経を唱えるお坊さんは、歌もさぞ上手なのだろうと予測するのは当然かもしれません。
この記事では、私の実体験をもとに考察を含め紹介しました。
必ずしもお坊さんが全員この記事に当てはまるわけでないのでご理解いただければと思います。