輪袈裟って必要?真言宗の現役僧侶が輪袈裟について解説!

お葬式や法事に行ったとき、お寺の行事の際などに首から袈裟をかけてお参りする人を見かけたことはあると思います。

袈裟は、仏教徒の証であり、宗派によって見た目や形がことなってきます。

最近では、渋いデザインのものから、女性向けの可愛らしいデザインのものも購入でき、若い方は今風のデザインの袈裟をつけているのをたまに見かけます。

ですが、袈裟とはなぜ身に着けるのかご存じでしょうか?

この記事では、真言宗の僧侶である私が師匠から教わったことを含め、袈裟の起源や身に着ける意義を解説していきたいと思います。

それでは、袈裟について学んでいきましょう。

そもそも袈裟ってなに?

袈裟は、昔のインドの衣服からきています。

インドの僧侶集団は、僧侶個人の所有物を三種類の衣服と托鉢用の鉢以外を認めませんでした。

ちなみに、この三種類の衣服はそれぞれ、正装用の僧伽梨(そうぎゃり)、修行用の鬱多羅僧(うったらそう)、日常生活用の安陀会(あんだえ)これらを合わせて三衣(さんね)といいます。

今でもタイやスリランカの僧侶が一枚の布を体に巻いているように、僧侶は捨てられているボロ布を拾い集め三衣を作ります。

そして、三衣がくすんだ濁った色(壊色)であったことから、梵語のカシャーヤが袈裟の語源になりました。

インドやタイでは一枚の布でも生活できますが、仏教が北方に伝わると事情はかわります。

北方に行けば気候が寒くなり、三衣だけではとても寒さはしのげませんから、下にも衣類を着るようになります。

その結果、中国や日本では、三衣は実際に生活するために着るのではなく、僧侶の象徴として法衣となっていったのです。

その後、日本では服の上からでも着用できる我々が想像する輪袈裟の形になってきたようです。

日本の袈裟の特徴

日本の僧侶も、普段は茶色や灰色の壊色(えじき)のお袈裟をつけていますが、これは三衣の名残といえるでしょう。

法要やお葬式の時は、きらびやかな袈裟を着用していますが、これは仏法の輝きをあらわしているともいわれています。

機会があったら、僧侶がつけている袈裟を良くご覧になってください。

袈裟をよく見ると、小さい布を縫い合わせて作られています。ここから三衣の伝統が残っていることがわかります。

そして、宗派によって着用する衣もことなり、九条衣・七条衣・五条衣・輪袈裟・半袈裟・威儀細など様々な袈裟があります。

真言宗の輪袈裟の特徴

真言宗 輪袈裟

上の画像の袈裟は、私が普段使っている真言宗の輪袈裟となります。

輪袈裟といわれるように、輪っかの形をした袈裟で、真言宗の紋である桔梗(ききょう)が刺繍されています。

この紋は、真言宗のなかでも様々あり、例えば豊山派であれば「輪違」といい輪っかが二つの輪が組み合わさったような紋を刺繍し、御室派であれば菊を刺繍しています。

このように、真言宗だけでも様々な種類があることがわかると思います。

ですが、私も最初から輪袈裟をつけていたわけではなく、僧侶として僧籍を得る以前は半袈裟を身に着けていました。

輪袈裟は、僧侶の証として着用しますが半袈裟は、半俗半僧といわれるように半人前の者が身に着ける袈裟となります。
車で例えるなら、半袈裟が仮免許で輪袈裟が免許皆伝後の免許証となるわけですね。

余談ではありますが、浄土系のお寺さんが髪を伸ばし、半袈裟を身に着けているのはこの半俗半僧からきているようです。

袈裟の取り扱いについて

私が本山で修行しているときに、お手洗いに急いでいたため、袈裟をたたまないまま床に置き、トイレに駆け込んだことがありました。
それがたまたま師匠に見つかり、こっぴどく怒られた思い出があります。

それも当然で、袈裟は仏さまそのものであると私は師匠より教わっていました。
ですが、あろうことか仏さまを床に放ってトイレに行けば怒られて当たり前です。

師匠の教えは、袈裟は仏さまであり、それを纏って我々は信徒や檀家の皆様の前に立ち説法をするのです。

今思い返すと大変お恥ずかしい話ではありますが、この出来事があったおかげでそれ以来袈裟の扱いには気を付けるようになりました。

みなさんも僧侶が着る袈裟ではなく、半袈裟を身に着けることがあると思いますが、外した時は粗末な扱いはせず、きちんとたたみ、床や机にそのまま置くのではなく布や風呂敷の上に置くようにしましょう。

袈裟は、「仏さまそのもの」と思えば粗末に扱えませんよね。
是非実践していただければと思います。

まとめ

袈裟について解説してきましたが、私の師匠曰く、袈裟は仏さまそのものであります。

大切に扱うのはもちろんのこと、それぞれ宗派の紋を刺繍しているとお話ししましたが、その宗派の集団の一員として恥じない行動を心掛けたいものです。

お釈迦さまがいらした時代のインドから伝わった伝統ある袈裟であるからこそ、その由来を理解したうえで身に着けることができたのなら、袈裟を着用する心構えも自ずとかわってくることと思います。

ちなみに私のお寺では、読経会に規定の回数参加すると半袈裟をお配りしています。

お寺によって配布しているところもあるようですので、一度菩提寺に確認してみてもいいかもしれません。

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